2008年08月28日

NGO「ペシャワール会」の伊藤和也さん拉致殺害、悲しい思い

 ネットで、伊藤和也さんが、2003年にペシャワール会に提出したワーカーの志願書を読んだ。今から5年前であるから、伊藤さんが26歳のときだろう。それを読んでいて、ふと思ったのが、宮沢賢治の事だった。困っている人を助けてあげたい、その文面から読み取れるのは、彼の利他に対する熱い思いである。たぶん、今回の事件が報道されなければ、伊藤さんの思いも活動も、その個人的な利他に対する感受性も、周知されなかったに違いない。いずれ、誰かが、伊藤さんの生き様をドキュメンタリーにまとめ、それをどこかのテレビ局で、映像化することが、予見できる。宮沢賢治のように利他のために危険を顧みず、現場に行き、農業指導を行う。もうひとつ、つっこめば、野口英世博士にも通じるものがある。黄熱病の研究のために、アフリカに行き、その黄熱病に感染して51歳の若さで死去した野口英世博士とも重なる。伊藤和也さんの拉致殺害に関しては、この不条理に対して、誰もが強い憤りを感じるはずである。どんな政治的駆け引きやどんな反政府的な名義があろうとも、彼らには一切の抗弁もない。単なる人殺しである。秩序が回復されれば、伊藤さんを殺害した実行犯を探し出し、裁判にかけるぐらいの声明を日本国政府には出してもらいたい。無理と分かっても、そのくらいの気骨をみせてほしい。それはテロと戦う以前の問題である。

 これは、色々な面で、世の中の矛盾にかかわる問題でもある。同じ地球の上で、確かに持てるものと、もてないものとの格差が存在しているのも事実である。そこに、差が存在するから、経済が動くのもまた事実である。そして、その底辺に流れているのが、人間の欲望である。この人間の欲望の循環の狭間で、伊藤さんは、犠牲になった。それも、また事実である。豊かな人がいる。豊かな人がいることは、豊かでない人がいることである。それもまた事実である。たしかに、指導者の力量により、国が豊かになることもあれば、治安が乱れ社会世情が不安になることもある。世界や日本の歴史をみれば、分かりきっている。私には、十分に理解できないが、ユダヤ、キリスト、イスラム等の宗教や民族間の対立が2000年以上繰り広げられている。それが、今もくすぶっている。今回の犯行集団は、イスラム原理主義勢力の反政府組織タリバンである。彼らの頭は、イスラム原理主義勢力と西側、宗教的にいえば、ひとくくりにはできなぎが、キリスト教がある。彼らの頭には、格差を生んでいるのは、西側の文化である。それを排除することが、彼らの大義名分である。良く分からないが、そういう論理のはずである。殺す側の論理は、いつでも、めちゃくちゃである。

 タリバン側の報道官の弁明はこうである。「NGOが住民の役に立っていることは知っている。しかし、住民に西洋文化を植え付けるスパイ」と伊藤さんを見ていたのである。だから、「日本のように部隊を駐留していない国の援助団体でも、殺害する」、この論理で伊藤さんは殺されたのである。彼らの論理には、伊藤さんの純粋な利他の精神、自己を犠牲にしても、困っている人を助けるという利他の精神を推し量るものがない。タリバン側には、そういう崇高な精神をもった人がいない集団である。よしんば、タリバン側の上層部にいたとしても、末端まで、それを理解させるような統率力がないことを示している。ごろつき集団だといってもいい。町の美化運動をして、毎朝、無償でボランテアで、道に落ちているゴミやたばこの吸殻を拾い集めている人がいる。それをよそ目にして、車から、たばこのすいさしを平気でポイポイすてる輩と基本的には同じ構造である。公衆のトイレを汚してぶち壊す輩と同じである。


 どこの世界も同じである。そういった非合法的な集団が生きていけるのは、そこに資金が流れるからである。テロ集団でも、非合法暴力組織にしても、人が関与しているかぎり、その構成員やテロリストもこの世で生きなければならない。そのためには、生活する資金がいるのである。集団で何かするときは、暴力的に秩序を乱すが、ひとり、ひとりの生活の場になれば、みんなとおなじ、ルールにのっとって、生きなければいけないはずである。だから、活動資金を稼がなければ彼らも生きていけないのである。どんな組織(企業も官庁も含めて)も、その組織がこの世で生き残るためには、金がいるのである。そして、どこの非合法組織でも、資金を調達するのは、たいてい、麻薬である。非合法的なものに手を染めるから非合法組織なのである。ここに、矛盾がある。世界で誰も車を買わなければ、自動車会社は、一日でつぶれてしまう。それとおなじことである。世界の誰もが、麻薬を必要としなければ、非合法組織は、一日でつぶれてしまうのである。麻薬は禁止されている。しかし、そこに麻薬であって、そこに人間の欲望や快楽が絡んでくれば、どうしても、金を持っている人はそれを欲しがるものである。人間の愚かさが出てくるのである。伊藤さんの精神とは対極の人の欲望の世界である。伊藤さんから見れば醜い世界でもある。その犠牲に、伊藤さんはある面なったといっても過言ではない。

 いくら、贅沢を尽くしても、一日で使える金は決まっている。財宝を買ったとしても、刺激がないはずである。そう、大金持ちが最後にたどり着くのは、色と薬なのである。非合法だから、高いお金を出して購入するのである。そして、一度、その中毒にかかれば、そこなしである。中国の清朝が西洋列国に植民地化されたのも、アヘンである。何故、タリバンが体を張っても。襲撃し、アフガンやパキスタン等の地域にこだわるかは、そこが、ケシが多く取れるところだからである。ケシから麻薬が作られるからである。資本主義経済が生まれてから、今に至るまで、その循環構造は変わらない。そして、いつも、その犠牲になりたっているのが、その金の循環にありつけない人々なのである。その人達は、いつも、自分の欲望を満たすために動いている人達である。自分の利益のため、つまり、自利で動いているのである。殺された伊藤さんにとって、なにか、自利があったのだろうか、ともに汗を流し、自分がもっている技術で、アフガンの貧しい人達が喜んでもらえれば、その一念だけで、他人のために、自分の命が危険にさらされても、がんばったのである。それが、伊藤さんの自己陶酔だったかもしれないが、そこまで、普通、出来るものではない。

 ご冥福を祈るだけである。伊藤さんと同じような考えで、がんばっている人達もいるだろう、一端、危険な地域から撤退したほうがいい。やはり、命あってのものである。



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